- 2014.07.22
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ナツイチ
お世話になっております。営業部の和田です。
夏といえば夏休み。夏休みといえば夏休みの宿題。
夏休みの宿題といえば、読書感想文。
ということで、書店では今年も各出版社の文庫本商戦が
始まっております。趣味:読書と言えるほどの熱心な
読書家ではない僕ですが、持ち前のわかりやすい性分で
この時期になるとなんとなく本が読みたくなってしまいます。
さらに、実は誰にも発表することなく毎年、和田文学賞を独りで
選定しているのですが、今年の有力候補2作を特別に紹介します。
※選考対象は発表年ではなく、その年選考委員が読んだもの
『身の上話』佐藤正午
物語は語り手の「私」が「妻のミチル」の生い立ちを語る
ところから始まります。海辺の田舎町で別段何事もなく生まれ育った
平凡で主体性のない23歳の書店員・ミチルが、東京から定期的に
出張に来る出版社の営業となんとなく不倫の関係を持ち、ある日の
勤務中、なぜだか衝動的に彼の帰りの飛行機に同乗してしまう。
財布には、その日書店の同僚から頼まれて購入した宝くじが…。
そこからミチルの人生は一変、流されるように転がるように…。
そして、そんなミチルの「身の上話」を淡々と語る「私」とは
一体、誰なのか?
作者の文章は平易で淀みなく、スイスイ読み進められるので
一寸先も読めないスリリングな展開に、いつの間やらドップリ
浸かってしまい、ページをめくるのに夢中になってしまいました。
『横道世之介』吉田修一
時はバブル全盛期、地元九州から大学進学のため単身
上京した18歳の若者・横道世之介が、天性の憎めなさと
お人好しを武器にドタバタしつつも楽しげな大学生活を送る
一年間と、その一年の間に世之介とと触れ合った同級生や
恋人が、何年も経ってふとした時に彼を思い出す様子を
交互に描いていきます。
まさに自分自身が同じく18歳の時に上京(さいたま)して
一人暮らしを始めたこと、慣れない都会暮らし(さいたま)に
戸惑いつつも目にする全てに胸が躍ったことを鮮やかに
思い出し、何とも懐かしいような切ないような、でもとても
心地いい気分で読み進めました。
この小説はとにかく主人公・横道世之介のキャラクターに加え
彼を取り巻く登場人物が非常に活き活きと魅力的で、それだけに
結末の余韻は痛切に胸を打ち、もともと病的に感情移入しやすい
僕には読み終えてこの世界と別れることが耐え難く、何度も
ページを読み返し、なかなか閉じることができずにいました。
なお、どちらの作品もそれぞれ連続ドラマ化、映画化されて
おりますが原作にハマり過ぎた僕は腰が引けて未見です。
でも、特に『横道~』は映画の評判も高いので、近々必ず
借りてこようと思っています。